1991年当時、日本はバブル経済。
アメリカでは、日本企業が N.Y. の超高層ビルや映画会社を買いあさり、日本人がエコノミックアニマルと呼ばれていた時代である。
日本製品の不買運動もニュースとなり、不穏な空気を感じた。
「欲を離れ、米国民に喜んでもらえれば親善につながる」という考えが、日本企業の中にもあっていい。
そんな考えで、カナレはロサンゼルス市に桜を贈ることにした。
創業20周年記念事業としてである。
なぜロサンゼルスか? ここにはカナレの海外最初の子会社があったからだ。
一方、ロサンゼルス市。 新しく作った公園だが、目玉にできるものがない。
両者の思惑が一致し、この公園に「桜の名所づくり」が決定した。
日本企業が海外に桜を寄贈するとき、セレモニーをして記念事業は完了する。
その後、放置され、反対運動が起こったりした結果、枯れたり伐採されたりすることが多いという。
カナレは、そのやりかたを嫌った。
日々、水や肥料を与え、手入れするのは公園職員。 彼らが共感しなければ成功しないはずだ。
そのためには「桜」の文化を理解してもらわなければ始まらない。 男たちを集めてオリエンテーションをした。
「桜は枯れ木のような状態から一斉に花が咲く。それを楽しみに、遠路から花見というかたちでやってくる」「日本では何百年も繰り返されていることを知って欲しい」と。
植樹のとき、公園職員は自分が植えた苗木の前で記念撮影をしたという。
それから13年余、病気、害虫などから守られ、こんなにりっぱな木に育った。
ワシントンのポトマック川に劣らない、みごとな桜の名所がロサンゼルスにできたのだ。